柵の中には四匹のカンガルーがいた。一匹が雄で二匹が雌、あとの一匹が生まれたばかりの子供である。
カンガルーの柵の前には、僕と彼女しかいない。もともとたいして人気のある動物園でもないし、おまけに月曜の朝だ。入場客の数よりは数のほうがずっと多い。
我々の目あてはもちろんカンガルーの赤ん坊である。それ以外に見るべきものなんて何も思いつかない。
我々は一月前の新聞の地方版でカンガルーの赤ん坊の誕生を知った。そして一ヶ月間、カンガルーの赤ん坊を見物するに相応しい朝の到来を待ち続けていたのである。しかし、そんな朝はなかなかやってはこなかった。
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村上春樹という小説家の「カンガルー日和」という短編の書き出しです。
この短編は、この作品と同じタイトルで、本になっていて僕の気に入っている本のひとつです。
高校を卒業するときに一度自分の本を全部処分したんですが、この本だけは捨てられなくて、自分の机の引き出しに入れていました。
この本には、「チーズ・ケーキのような形をした僕の貧乏」という作品も入っていて、大好きな話です。
村上春樹から、とても多くの影響を受けたように思います。
時々、この人の話も紹介したいと思います。
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