「傘を忘れていないわね?」
「うん。」
ドアが閉まりかかり、メグレはすでに顔を階段のほうに向けていた。
「マフラーをしていったほうがいいわ。」
夫人はマフラーを取りに走って行ったが、このちょっとした言葉がしばらくメグレを困惑させ、つづいて憂鬱な気持ちにさせたとは思いもしなかった。
十一月になったばかりで ― 十一月三日 ― 、まだ特別に寒いというわけではなかった。ただ低い、単調な空から、いつもの雨よりずっと激しい、陰鬱な雨が落ちていた。とくに明け方はひどかった。
―河出文庫、長島良三、冒頭部分
推理小説家、ジョルジュ・シムノンの「メグレ警視シリーズ」の一つです。テレビアニメの「名探偵コナン」にも、「目暮警部」という人が登場しています。
原作は、フランスの街や人々生活の雰囲気が伝わってきます。推理小説というよりも、メグレ警視を中心とした人々の人生を描いた小説、という感じです。警察小説、という表現をされる事もあるそうです。
ジョルジュ・シムノンという人は、四百冊以上の小説を書いたそうです。推理小説以外にも人気のあります。
ジョルジュ・シムノンについて → wikipediaジョルジュ・シムノン
メグレ警視は、パイプ煙草をくわえて、フランスの街を歩き、同僚や婦人と会話します。僕には事件より、その描写のほうが面白く、フランスの夜の街をメグレ警視と一緒に歩いてるような気持ちになって楽しめました。
シムノンの本は、日本語訳でいくつかの出版社から、いくつも出版されてますが、河出文庫で読むのが一番フランスの雰囲気が出ている気がします。ただ、いまはほとんど古本でしか手に入らないようです。しかも、ネットではプレミアがついてて高くなってる事が多いです。巻によっては、一冊2,500円とかのもありました。(リンクamazon.jp)下の写真は僕が持っているメグレ警視シリーズですが、僕のは安かったです。残念。
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